麹が変われば酒が変わるうまさの鍵は麹造りにあり
江戸期から続く歴史を感じる蔵
R西条駅南口を出て東へ歩くと、すぐに目に入ってくるのが大きな白壁。白牡丹酒造の延宝蔵です。同社は1675年の創業から300年以上、この地で酒造りを続けている、広島でも歴史のある酒造会社です。
延宝蔵から西条酒蔵通りを挟んだ向かいにも江戸期に建てられた母屋が残ります。2つの大きな酒蔵が西条を訪れる人を出迎えてくれます。島治正社長にお話を伺いました。
機械化しても変わらないもの
戦後から一貫して、ふだん飲む酒のおいしさを追求している白牡丹。甘口の酒が多い広島酒の中でも「うまさがちがう」酒質を目指してきました。うまさの秘密は麹造りにあります。
昔ながらのもろ蓋を使った麹造りと同じ環境を、自社開発の自動製麴機で再現。データを分析することにより、経験や感覚だけでなく、数値も重視しています。島社長は「麹が変わればお酒が変わる。機械化しても麹は変わらないことにこだわってきた」と語ります。
甘口の鍵は米の糖化と軟水
酒米は、酒造りの適性も高い広島県産の中生新千本を主に使います。そして、米が酒に変わっていく過程で、大きな役割を果たしているのが麹。白牡丹の特徴である「甘み」を残そうとすると、酵素量の多い麹が必要。
米を溶かし、糖化させ、その米のうま味が酒の味に変わっていきます。米と同様に大切なのが水。同社にはいくつもの井戸がありますが、酒造りには、比較的軟らかい延宝蔵の水を使っています。
若い世代に伝えたい麹の文化
今年の酒まつりはオンラインでの開催。酒を酌み交わすことが難しくなりました。「若い人たちには先入観がなく、酒はある意味新しいものになっている」と見る島社長。
酒の面白さをどう伝えるかがこれからのテーマです。「酒はもちろん、みそ、しょうゆ、甘酒、日本が誇る麹の良さ、麹の文化を伝えていくことも大事だと思う」と力を込めます。