辛口の中においしさを求め酒造りの新境地を目指す
洋館となまこ壁が隣り合う酒蔵
西条酒蔵通りに面して建つ亀齢酒造。美しい白壁やなまこ壁、赤瓦、杉玉と、酒蔵の象徴的な外観に、写真を撮ったり足を止めたりする人も。
通りからは、酒の試飲や酒にまつわる物品、土産物などを販売する土産物店「万年亀舎(まねきや)」が見えます。
酒まつり当日は、酒蔵通りから万年亀舎へ、そして奥の蔵へと、多くの人が終日行き交い、にぎわいます。
ゆるぎない信念が生む辛口の酒
甘口の酒が多い広島で、代々辛口を貫いている亀齢酒造。
「祖父の時代に、甘口の売れ行きが良いときがあったそうです。
しかし祖父は『ここで信念を曲げたら、うちの土台が揺らぐ』と、甘口へ舵を切らなかったんです」と、石井崇太郎さんが亀齢の原点を話します。
近年、精米歩合が高くなる傾向にありますが「そこまで精米しなくても、酒造りの技術があれば良い酒はできる」という逆の発想で、主力商品である80%の「辛口純米 八拾」が誕生しました。
低精米の先駆け的商品「八拾」
キレの良いすっきりとした辛口の「辛口純米 八拾」。
個性的、独特と評されファンが多いその味は、兵庫県但馬の杜氏親子が手掛けています。
「使ったことのない精米歩合の米で新しい酒を」という提案に、杜氏が試行錯誤の末にたどり着きました。
醪を搾るときは、えぐみが出ないよう、ゆっくり丁寧に。手間をかけることで「磨かなくてもおいしい酒」を実現。
まずは飲んでもらいたいと安価で販売したので、非常にコストパフォーマンスの良い酒となっています。
酒ファン以外も楽しめる商品展開
日本酒ファンだけでなく、女性や子どもたちも楽しんでもらいたいと、酒粕を使った豆菓子の他、うどん、石鹸、ジェラートなどの関連商品が次々に誕生。
万年亀舎にずらりと並び、観光客を楽しませています。
酒造りについても、代々受け継がれてきた「開拓者」の気持ちが発揮されています。酵母を変えてみたり、もっと精米歩合の低い酒の試験醸造をしたりと、亀齢の挑戦はとどまるところを知りません。